最高裁判所第二小法廷 平成3年(行ツ)100号 判決 1991年9月13日
東京都府中市晴見町四-一〇-一
府中刑務所在監
上告人
三浦正久
東京都目黒区中目黒五-二七-一六
被上告人
目黒税務署長 池上武
同
千代田区霞が関三-一-一 国税不服審判所長
被上告人
杉山伸顕
右両名指定代理人
小山田才八
右当事者間の東京高等裁判所平成二年(行ソ)第二号所得税更正処分等取消請求再審事件について、同裁判所が平成二年三月一九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
本件再審の訴えを不適法として却下すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、独自の見解に基づいて原判決を論難するものであって、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤島昭 裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平 裁判官 大西勝也)
(平成三年(行ツ)第一〇〇号 上告人 三浦正久)
上告人の上告理由
第一点 原判決には憲法三二条違背及び釈明権不行使の違法があること。
一 原判決理由によれば、本訴は(本案)控訴で未だ係属審理中で確定していないから、再審の要件を欠くものとして不適法な訴えであるから却下するというものであるが、左のとおり上告人には理由があるから
事実誤認等による原判決は取消しさる可きものである。
二 ところで上告人は、確かに原判決理由の如く旧訴について平成元年(行サ)第一〇一号行政上告人受理事件として上告中であったが、右上告事件について訴訟費用を全く予納できず、原裁判所に対し、上告提起と共に訴訟救助付与申立を提出し、平成元年(行タ)第四二号として原裁判所に係属したが、これが却下されたため、上告人は直ちに最高裁宛平成元年(行ト)第四六号として特別抗告申立書を提出した。然し乍ら、右特別抗告は平成二年一月二七日付で却下され自然確定するに至った。然し上告人は右旧訴の上告費用を全く予納することができなかったため、当然にして、右旧訴上告事件は、訴訟費用の納入がないから要件を欠くとして擬制による訴え取り下げと認められるに至っているところである。これにより旧訴上告事件は、右取り下げ擬制で自然確定(原旧訴)したことになる。そうすると、旧訴上告事件は既に確定していたから原判決には、重大なる事実誤認がある。
三 一方、旧訴上告事件について、前項の如く、擬制による取下げ等による確定が得られて居なかったものであるならば、原裁判所が、その点について、上告人に対し職権による釈明権を行使するなどして、上告人に対し、旧訴の取下書を提出しなければならない点を指摘するなどして、再審要件について補正等求める可きであったところ、原審訴えに対し原裁判所は、何ら釈明権を行使せず上告人に対し弁論期日も全く設けず安易に訴えを却下したことは記録上明らかである。
この事実は、憲法三二条で保障された上告人の訴権を侵害するもので明らかに上告人の訴権に基づく原裁判所の釈明権不行使の違法があったものであったから取消しは、免れないものである。因みに上告人は、本人訴訟の者で法知識も不備な者であり、かつ不釈明権さえ行使されることがなく、審尋は、勿論、期日さえ設けず直ちに却下した原判決には、明らかに上告人の憲法三二条で保障された訴権の侵害にも該当されると確信するから原判決は取消される可きものである。
四 原判決には民訴法三五条六号違反があること。原判決をした裁判官は、裁判長田尾排二、裁判官寺澤光子、裁判官市川頼明の三名であるところ、右三名の内裁判官寺澤光子及び裁判官市川頼明の二名は、旧訴(原審)の判決をなした同一裁判官であることは、記録上明らかである。民訴法三五条六号には、明らかに除付条件が定められて居るところでこれら右二名の裁判官が原審判決に関与していたことは不法であったことになるから、右二名の裁判官は除斥は免れないことは明らかである。そうする原判決は判決できない裁判官によってなされた判決であったから、破棄される可きものである。
五 結語、以上の如き理由で明らかに原判決には、憲法三二条に違背したばかりか釈明権不行使の違法及び民訴法令違反等あったから取消しされる可きものである。
以上